スポイトで落とす音で滲む表面が、

何度か足を運んでいるのに、いつも迷子になってしまう。

 

坂本龍一 設置音楽展 / ワタリウム美術館 ¥ 1,000

 

根津美術館に行った後、国立新美術館に行こうとしていたのですが、どうやらとても混雑しているという情報を聞きつけて、急きょワタリウム美術館に変更。のんびり青山通りをお散歩しました。

 

坂本龍一といえば、YMO戦場のメリークリスマスで・・・という大雑把なイメージしか持っていなかったのですが、今回の展覧会で、芸術家で活動家なんだなあ、という印象を受けました。

 

8年ぶりのアルバム async を、自分が聞いて欲しい環境を自分で、作って流す。観客はただただそれを受け入れる。

ライブのような、お客さんに楽しんでほしい、みたいなスタンスではなく、自分の聞いて欲しい、感じてほしい環境を、ただただ押し付ける。押し付けるって言ったら少し語弊があるけれど、観客に落とした音楽ではなく、自分の聞いて欲しい音についてきてほしい、ってきちんと音に責任を持つっていうか、なんというか、アーティストタイプの音楽家さんなんだなあ、かっこいいなあ、と思いました。

 

現代アートは、その芸術家の思想や信念みたいなものを込めることによって、アートたらしめるところがあるなあと思っているけれど、ここ数年、芸術祭ブームが来て、比較的、私たち一般人に寄り添うアートが流行っているってイメージだったのですが。

ここでまたがつんとコンセプチュアルアートみたいなものを見せられて、久々にいろいろなことを考えることができて、とても満足です。やっぱりアートってわかりやすくても、つまらないのです。

 

async

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いずれあやめかかきつばた

さてと、GWにいくつか企画展に行ってきたので、感想をつらつらかきます。

 

■ 燕子花図と夏秋渓流図 / 根津美術館 ¥1,300

 

つばめ?こ?ばな????と恥ずかしながら、なんと読むのかわからなかったのですが

カキツバタと読むらしい。カキツバタは杜若ではないのか。

 

基一の絵を観たくて、GWに根津美術館に行ってきました。この前の基一展/サントリー美術館で少し気に入ったのです。

GW中だからか、人が多かったのですが、庭園のカキツバタがちょうど見ごろで、青紅葉と相まってとてもきれいでした。

 

燕子花図屏風 尾形光琳筆 が一番好きで、もしかしたら金に群青色っていう組み合わせが、私は好きなのかもしれない。

 

江戸時代の絵描きさんは、お金持ちの人に注文されて描く職人的立場だったらしく、基一もパトロン的存在がいたりと、どちらかというと作品というより商品的意味合いが強かったのかもしれない。岩絵具がふんだんに使われていて、贅沢。

 

大満足だったのですが、芸術ってなんだろうなあ、とぐるぐるしてしまったのは、この足で向かったのが、ワタリウム美術館だったせいかもしれない。

 

 

もっと知りたい尾形光琳―生涯と作品 (アート・ビギナーズ・コレクション)

もっと知りたい尾形光琳―生涯と作品 (アート・ビギナーズ・コレクション)

 

 

 

 

ピアスの穴を親指で触る。

生きやすくなったのは、生きやすい環境へ、ただ逃げただけで、たぶんなにも解決なんかしていない。

 

永い言い訳を読みました。映画を観た後、そのまま本屋さんへ向かい購入。

語り手が章によって異なるので、物語に入っていくのに時間がかかりましたが、ラストに向けてぐぐぐっと引きこまれて行き、あっという間に読み終わりました。

 

ラストの、と言いますか、陽一の行動が、映画と小説と違う箇所があって、映画では、少し違和感を覚えたところだったのですけど、小説ではすとんと、行動の理由に納得出来て、そう言う意味では、小説の方が好きです。

 

小説では、内面を言葉で表現できる強みを、映画では、視覚的に表現できる強みを、それぞれきちんと活かしていて、映画の小説化でもなく、小説の映画化でもなく、独立した作品として、それぞれ楽しめて、やっぱりこの監督さんの持つバランス感覚がとてつもなく好きなのです。

 

多分、真平にとってこの時期に幸夫くんに会えたことは、彼の人生にとってとてつもない影響を与えたんじゃないかなあ、と思ったり。

 

 

永い言い訳 (文春文庫)

永い言い訳 (文春文庫)

 

 

 

 

 

射す光は、婉曲に曲がって。

新海監督の作品は、言の葉の庭が好きです。

 

撮りたい画を撮る為に、役者やスタッフを振り回す、そんなことをしなくても、アニメでは欲しい画を描くことができてしまうんだ。そうしたら、アニメはもっともっと邦画に浸食しちゃうかもしれない。って、言の葉の庭を観た時に思いました。

好きな時に、雨を降らせ、雲を描き、実写じゃあり得ない角度から光を入れる。欲しいところで、空に飛行機を飛ばし、欲しい時にカラスを鳴かす。

油絵しかなかった時代にカメラをみつけた芸術家みたいに、アニメを見つけた芸術映画監督さんたちはどんなアニメーション映画を作るんだろうって。

 

君の名は、を観ました。本当は地上波を待つ予定だったけれど、だってとても話題だったから。RADWIMPSが全曲提供していることや、新海監督が監督をしていること、日本だけでなく海外でも大ヒットしていること。それに、あまりにもロングランしているので、映画館にふらっと行ったらいつもやっていて、サブミナル効果?

 

ストーリーは、物凄くテンポがよくて、ぐうっと引きこまれました。日本人的な考えである、"縁"みたいなものを描いていておもしろいなあとも思いました。冒頭のシーンで、ぽんぽん二人が成長したり若くなったり、最後まで観てなるほど、って。

 

映像も、もちろん綺麗で。特に夜空の絵。あんな拡がりを演出できちゃうのは、やっぱりアニメーションはずるいなあって思ったり。

 

RADWIMPSの音楽が、もともと好きなので、彼らのPVみたいにも楽しめたり。

 

色々な楽しみ方があって、なんだかんだ5回ほど観たのですが、観終わった後に、少しだけ気になっちゃったところが一点だけあって。あったことをなかったことにしちゃうのかなって。現実は、喪失を受けれ入れて進んでいかなくちゃいけないのに。そういう意味では、この作品はアニメなのかも。

個人的に、生まれ変わりやタイムトラベルやら夢落ちやら、元に戻す、という終い方があまり好きではなくて。個人的趣向の問題。

 

流れるエンドロールを観ていたら、今のアニメ界の勢力全部つぎ込んで作りました!!!って錚々たる名前があって、監督・脚本として新海監督の名前はあるけれど、自由にやれたわけじゃないんだろうなって少し深読みしたりしなかったり。

 

新海監督は、次はどんな綺麗な画をみせてくれるんだろう。楽しみ。

 

 

 

思想の強さとは反比例して、

■ MIYAKE ISSEY展: 三宅一生の仕事 / ¥1,300 / 国立新美術館

 

GWに行った展覧会ふたつめ。もう随分と前のことだけれど。

ルノワール展とあわせて行ってきました。

 

国立新美術館ってこういう演出もできるんだ!!!!って勉強になりました。空間演出が凝っていて、展示会をみているようで非常に面白かったです。

段ボールで作ったようなマネキン。一番広い空間の布一枚を天井から吊るすことによって生まれる洋服を被る獣のマネキン。いろいろなマネキンが使われていて、それがとても印象的でした。マネキン、マネキン。マネキンって日本語なんだろうか。それとも、ドイツ語?

スカンジナビアン風の照明がとても素敵でした。

 

 

MIYAKE ISSEY展 三宅一生の仕事

MIYAKE ISSEY展 三宅一生の仕事

 

 

 

流れに身を任せたまま。

27歳の私は、15歳の頃の私より少しもかしこくない。私ばっかりずっと同じ場所にいる。

背景がとても綺麗でした。緑紅葉が美しい。
新宿駅、速単、チョコレート、ビール、マリメッコのカップ。
そして、粉々になったファンデーション。


ユキノさんは強い、だって田舎に帰ってまた同じ職業についてるもん。
ちっとも逃げていない。


遠目からのぞく。

GW中に行った展覧会の感想めも。ひとつめ。

 

ルノワールオルセー美術館・オランジェリー美術館所蔵 / 国立新美術館 ¥1,600

日本人って本当に印象派すきだね!
わたしもだいすきです。

初来日ムーラン・ド・ギャレットの舞踏会を観たくて、わざわざ混雑極まりないGW中の国立新美術館に行ってきました。

最近こういう企画展って、壁に芸術家やそれに関係する人のコメントが描かれていて、それを見るのが楽しみなんですけど、今回私が一番好きな言葉はこれです。

これやらそれやら。
>>
To my mind, a picture should be something pleasant, cheerful, and pretty, yes pretty!
<<

彼の絵に対する姿勢が端的に表れている言葉だと思います。英語なのでこれが原文かどうか怪しいのですが。

 

ルノワールは、理想主義すぎる、としばしば言われることがあります。美しいことばかりしか描かない、現実にもっと向き合うべきだ、と。

しかし、これは私がふむふむと思ったところなのですが、彼は自分のことを"絵の労働者"であると表現していたそうです。
自分を芸術家だと思っていない。なんと、現実主義。労働階級出身なのかな。

少なくとも彼は、現実から逃避した結果の理想主義ではなく、きちんと現実と向き合った結果の理想主義なんだろうなあ、と思いました。

一番印象に残った絵は、目的のムーラン・ド・ギャレットでも、都会のダンス、田舎のダンスでもなく(でも本物が見たことなかったので感動!)、
72 ココ でした。ルノワールが60歳の時に生まれた息子。さぞかし可愛かったのでしょうか。
かなり気合い入った美少年に仕上がっております。召している服も、中世のような貴族のような雰囲気。しかも、男なのに、愛称がココ。

個人的には、彼の息子である、ジャン・ルノワールの短編映画が見られたのが良かったです。
フレンチ・カンカンを撮ったのって、ルノワールの子どもだったんですね。というか、ジャン・ルノワール監督って、ルノワールの息子さんだったんですね。すごい。

 

日経おとなのOFF(オフ)2016年1月号[雑誌]

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