じっぐらとう。
■ ブリューゲル バベル塔展 / 東京都美術館 ¥1,600
ブリューゲルももちろんですが、同時に何枚か展示されていたヒエロニムスボスの絵が大好きなのです。今回はこれがお目当て。
どれくらい大好きかというと、ボスの出身地デンボスにあるヒエロニムスボスアートセンターに行くために、わざわざオランダに行ってしまったくらい好きです。
アートセンターといっても、教会で、そこにボスの全作品(すべて贋作)があり、ボスが描いたおもしろい生き物のオブジェが天井から吊るされていたりと、ゆるい感じなのですが。
そんな雰囲気の場所だったからか、デンボスで一番印象に残ったことは、そのアートセンターではなく、電車の駅から降りてセンターまで歩いて向かう際、突然どしゃぶりになってしまったので、傘を買うために地元のスーパーにかけこんだことで。すぐ使いたかったのでタグを取ってほしかったのですが、レジにはさみがないということで、ハサミを求めてスーパーの中をうろうろしたのが良い思い出です。精肉エリアで無事発見し、白衣を着てマスクをしたおじさまがちょきんと切ってくれたのでした。
雨でびしょびしょに濡れながらハサミを求めて徘徊している日本人を哀れに思ったに違いない…。親切にしてくれる、デンボスの人、やさしい。
話がそれた。
ボスの絵は、不気味だけれど魅力的な生物がリアリズムの中にすとんと書かれているところが、好きな理由です。今風に言うと、きもかわいいキャラクターっていうところでしょうか。
絵がとてつもなく上手な人が、わざとわけわかんないもの描くの、いいよね。マグリットとか。
もちろん展覧会の目玉作品、ブリューゲルのバベルの塔は傑作でした。あんなに細かく描いているなんて、ルーペでじっくり見たかった。実際は、誘導されながら流れるように観終わったので、もう回転すしの寿司になった気分で、観ました。バベルの塔。
聖書の物語を直接的に描く作品って、啓蒙的意味合いが強いと思っていたのだけれど、ブリューゲルのバベルの塔はそうではなく、ブリューゲルお得意の庶民の暮らしがそこにはあって。人間たちが、目の前にあることを真面目に着々とこなし、そこには人の生活がある。そこが描かれいて面白かった。
旧約聖書を読んだ際は、欲深い人間たちがそれが神の逆鱗に触れた。みたいな二元的お話な印象だったのですが。
なんで、神様の怒りに触れ、言葉をバラバラにされなくてはならなかったんだろう、ただこの人たちは、別に神様に背こうと生きていたわけでなく、ただ必死に毎日を生活していただけだったのに、って自分の中で聖書を再発見することができました。
ボイマンス美術館所蔵 ブリューゲル「バベルの塔」展公式ガイドブック (AERAムック)
- 作者: 朝日新聞出版
- 出版社/メーカー: 朝日新聞出版
- 発売日: 2017/04/07
- メディア: ムック
- この商品を含むブログ (2件) を見る
灼ける青と、フィルター越しに見えるは、徒然。
原美術館で10日間限定でやっていたので行ってきました。父・蜷川幸雄の死に向き合った際に撮影した作品の企画展。出不精なので、短期間の展覧会は、いつもだったら行きたくてもいつのまにか終わってしまうパターンなのですが、これはなんだか行きたくて一日中うずうずがどうにも収まらなかったので、なんとか閉館駆け込みで行ってきました。あんなに早歩きしたのはいつぶりだろう。
今回の展覧会は、作品に限り撮影OKで、何枚も撮ってしまったのですが、(むしろハッシュタグをつけて、SNSでの拡散を推奨していた。) そうすることで、ずっと広範囲の人の中に蜷川幸雄は生き続けるし、たぶん私もこれからちょっと時間があるときにアルバムをスクロールしたりなんかして、この作品の写真に辿り着く度、蜷川幸雄を思い出すのだろうなあ、と思う。
桜の写真が数枚展示されていたのですが、とても淡い色で、なんだか泣きそうになってしまった。私が、今年も綺麗だなあ、なんてのんきにお花見をしながら毎年楽しんでいる桜は、誰かにとっては、そうではないこともあって。みんな平等に同じ風景があるのに、観る人の感情によってこんなにも違った光景に見えるものか、と。
あまり生のお芝居は見ないのですが、"世界のニナガワ"の作品を一度だけ観たことがあります。その舞台が終わり拍手鳴りやまない中、役者さんに手招きされて舞台上に出てきた蜷川幸雄さんが、なぜか、舞台の内容より強く印象に残ったのです。
そのときの蜷川さんは、恥ずかしそうに、でも嬉しそうにはにかんでいて。真っ黒のスウェットのようなものを着ていて。(役者さんが舞台上に呼んでいるとき、いやおれはいいよ、ほんとにいいって、みたいなジェスチャーをしていた。2階か3階の端席だったので、舞台袖がよく見えたのです。) TVで観る怒ったり怒鳴ったりしているイメージが強かったからかもしれません。
今回この展覧会の開催を知って、よくわからないけれど、このときの光景をがつんと思い出したのです。
知っているけれど、知らない人の死はなんだか、少し不思議で。死に近づいていく光景を見ぬまま、死の姿を見ぬまま、少し遠いところから死を知ることがほとんどで、心情の置き所が定まらない。あの時、はにかんでいた元気な蜷川幸雄の姿は、私の中に強烈に残っているのに、もうここにはいなくて、更新されることがない。うまく説明できないけれど、この写真を観て、死に近づく時間まで、私の中の感情を更新したかったのだと思う。だから、どうしても行きたくて仕方なかったのかもしれない。
写真とともに、蜷川実花の言葉もいくつか添えられていたのですが、一番印象に残った言葉を。
父はなんの後悔もない人生を送ったと言ったし、どこを切り取っても幸せな人生だった。 私も父と過ごした日々になんの思い残すこともなかった。
変わらないために、変えるあれこれ。
ここ一か月で、恐怖分子やらコナンやら、観る映画のアップダウンが激しい。
■ 名探偵コナン から紅の恋歌 (2017 日本) / TOHOシネマズ
コナンの映画を劇場で観たのは、何年ぶりだろうか・・・
理由はいくつかあるのですが
一つ目。
もしや大人が観てもいいんじゃないか、コナンって。って気が付いたから。
コナン好きです。子どの頃は、アニメも映画も観ていました。大人になっても、やっぱり黒幕は気になるので、黒ずくめの回は見ているし、映画も、テレビでやっていたら見るし。
でも、大人だし、さすがに恥ずかしいし、劇場でわざわざ…と思っていたのですが、どうやらコナン映画の客層って20代女性も結構多いらしいとどこかで見かけて。
私みたいに子どものころ見ていた層が大人になっても、見続けているのでは…。
二つ目。
ここ数年で、アニメーション映画を映画館で観ることに抵抗がなくなってきたこと。
特に昨年は、君の名は、からはじまり、この世界の片隅に、最近だと夜は短し歩けよ乙女などなど、映画館でアニメを楽しむことが増えてきたのです。
三つ目。
はっとり!かずは!!!京都!!!倉木麻衣!!!!
一番好きなコナン映画は、迷宮の十字路です。まるたけえびす~からの、ようとうむらまさやな!のながれ!!!!!まるたけえびす~からの、やっと会えたっちゅうわけか・・・のながれ!!!! とても個人的な理由。
からの四つ目。
金曜ロードショー地上波初放送・純黒の悪夢でのEDとED後パート全カット事件。
久々に京都が舞台の映画ということで、ちょっと気になっていたところで、あの全カットを目の当たりにし。
迷宮で一番好きなシーンは、あの倉木麻衣の京都EDとED後のシーンなのに!もしや来年のTV放送も、削られてしまう可能性が…!
ならいっそ観てしまおう!
と、いうわけで、ひさびさに劇場で映画を観る運びとなったのですが
観終わった直後の感想は、つ、つかれた・・・です。
嫌な疲れではなく、すっきりとしたものだったのですが。
非常に情報量が多い映画でした。常にキャラクターの台詞が詰まっていて、余白が少ない。特に、序盤は、事件とかるたの試合、推理と恋愛、ふたつのストーリーが別々に進み、シーンがころころ変わるので、ついていくのに必死でした。
また、説明がなく、映像のみで与えられる情報も多く、隙間が少なかったと思います。
けれど、全体の流れは破たんしておらず、すっきりとまとまっていて、終わったあと、ほえーすごい。と単純に映画として関心してしまった。
また、今年の映画は、ストーリーの軸がきちんとしっかりしていて、それに合わせキャラクターを適材適所に動かし、流れを遮断しない意味のある(?)爆発と、でも、毎年お決まりのシーンはきちんと入れて、と非常にコナン映画としてもバランスがよかったと思います。
(最近のコナン映画での爆発やらアクションシーンと、事件との関連性の希薄さはちょっと気になるポイントだったのです…。)
そして久々に映画館で鑑賞して気が付いたことは、
爆発シーンがかっこいい!!!ということです。大画面大音量の大爆発シーンは、盛り上がります!なんであんなにも爆発シーンやアクションシーンが多いのかわかりました。見応えあります。
あと、来年の製作予告がすごい。私が劇場で観ていた時は、最後に xxxx年 第xx弾 製作決定!と劇場画面に出るだけだったと思うのですが、最近は違うんですね…予告にもお金かけてます。かっこいい。きちんと映像もあり、声もあり演出もあり…!
あの最後数分の予告を観るために、来年も映画館に行きたい…と思ってしまった。
というわけで、予想以上にとても楽しめました。満足。
来年も観ちゃうのかも。観ちゃいそう…。楽しみです。
スポイトで落とす音で滲む表面が、
何度か足を運んでいるのに、いつも迷子になってしまう。
■ 坂本龍一 設置音楽展 / ワタリウム美術館 ¥ 1,000
根津美術館に行った後、国立新美術館に行こうとしていたのですが、どうやらとても混雑しているという情報を聞きつけて、急きょワタリウム美術館に変更。のんびり青山通りをお散歩しました。
坂本龍一といえば、YMOや戦場のメリークリスマスで・・・という大雑把なイメージしか持っていなかったのですが、今回の展覧会で、芸術家で活動家なんだなあ、という印象を受けました。
8年ぶりのアルバム async を、自分が聞いて欲しい環境を自分で、作って流す。観客はただただそれを受け入れる。
ライブのような、お客さんに楽しんでほしい、みたいなスタンスではなく、自分の聞いて欲しい、感じてほしい環境を、ただただ押し付ける。押し付けるって言ったら少し語弊があるけれど、観客に落とした音楽ではなく、自分の聞いて欲しい音についてきてほしい、ってきちんと音に責任を持つっていうか、なんというか、アーティストタイプの音楽家さんなんだなあ、かっこいいなあ、と思いました。
現代アートは、その芸術家の思想や信念みたいなものを込めることによって、アートたらしめるところがあるなあと思っているけれど、ここ数年、芸術祭ブームが来て、比較的、私たち一般人に寄り添うアートが流行っているってイメージだったのですが。
ここでまたがつんとコンセプチュアルアートみたいなものを見せられて、久々にいろいろなことを考えることができて、とても満足です。やっぱりアートってわかりやすくても、つまらないのです。
いずれあやめかかきつばた
さてと、GWにいくつか企画展に行ってきたので、感想をつらつらかきます。
■ 燕子花図と夏秋渓流図 / 根津美術館 ¥1,300
つばめ?こ?ばな????と恥ずかしながら、なんと読むのかわからなかったのですが
基一の絵を観たくて、GWに根津美術館に行ってきました。この前の基一展/サントリー美術館で少し気に入ったのです。
GW中だからか、人が多かったのですが、庭園のカキツバタがちょうど見ごろで、青紅葉と相まってとてもきれいでした。
燕子花図屏風 尾形光琳筆 が一番好きで、もしかしたら金に群青色っていう組み合わせが、私は好きなのかもしれない。
江戸時代の絵描きさんは、お金持ちの人に注文されて描く職人的立場だったらしく、基一もパトロン的存在がいたりと、どちらかというと作品というより商品的意味合いが強かったのかもしれない。岩絵具がふんだんに使われていて、贅沢。
大満足だったのですが、芸術ってなんだろうなあ、とぐるぐるしてしまったのは、この足で向かったのが、ワタリウム美術館だったせいかもしれない。
もっと知りたい尾形光琳―生涯と作品 (アート・ビギナーズ・コレクション)
- 作者: 仲町啓子
- 出版社/メーカー: 東京美術
- 発売日: 2008/09/25
- メディア: 単行本
- 購入: 1人 クリック: 31回
- この商品を含むブログ (11件) を見る
ピアスの穴を親指で触る。
生きやすくなったのは、生きやすい環境へ、ただ逃げただけで、たぶんなにも解決なんかしていない。
永い言い訳を読みました。映画を観た後、そのまま本屋さんへ向かい購入。
語り手が章によって異なるので、物語に入っていくのに時間がかかりましたが、ラストに向けてぐぐぐっと引きこまれて行き、あっという間に読み終わりました。
ラストの、と言いますか、陽一の行動が、映画と小説と違う箇所があって、映画では、少し違和感を覚えたところだったのですけど、小説ではすとんと、行動の理由に納得出来て、そう言う意味では、小説の方が好きです。
小説では、内面を言葉で表現できる強みを、映画では、視覚的に表現できる強みを、それぞれきちんと活かしていて、映画の小説化でもなく、小説の映画化でもなく、独立した作品として、それぞれ楽しめて、やっぱりこの監督さんの持つバランス感覚がとてつもなく好きなのです。
多分、真平にとってこの時期に幸夫くんに会えたことは、彼の人生にとってとてつもない影響を与えたんじゃないかなあ、と思ったり。
射す光は、婉曲に曲がって。
新海監督の作品は、言の葉の庭が好きです。
撮りたい画を撮る為に、役者やスタッフを振り回す、そんなことをしなくても、アニメでは欲しい画を描くことができてしまうんだ。そうしたら、アニメはもっともっと邦画に浸食しちゃうかもしれない。って、言の葉の庭を観た時に思いました。
好きな時に、雨を降らせ、雲を描き、実写じゃあり得ない角度から光を入れる。欲しいところで、空に飛行機を飛ばし、欲しい時にカラスを鳴かす。
油絵しかなかった時代にカメラをみつけた芸術家みたいに、アニメを見つけた芸術映画監督さんたちはどんなアニメーション映画を作るんだろうって。
君の名は、を観ました。本当は地上波を待つ予定だったけれど、だってとても話題だったから。RADWIMPSが全曲提供していることや、新海監督が監督をしていること、日本だけでなく海外でも大ヒットしていること。それに、あまりにもロングランしているので、映画館にふらっと行ったらいつもやっていて、サブミナル効果?
ストーリーは、物凄くテンポがよくて、ぐうっと引きこまれました。日本人的な考えである、"縁"みたいなものを描いていておもしろいなあとも思いました。冒頭のシーンで、ぽんぽん二人が成長したり若くなったり、最後まで観てなるほど、って。
映像も、もちろん綺麗で。特に夜空の絵。あんな拡がりを演出できちゃうのは、やっぱりアニメーションはずるいなあって思ったり。
RADWIMPSの音楽が、もともと好きなので、彼らのPVみたいにも楽しめたり。
色々な楽しみ方があって、なんだかんだ5回ほど観たのですが、観終わった後に、少しだけ気になっちゃったところが一点だけあって。あったことをなかったことにしちゃうのかなって。現実は、喪失を受けれ入れて進んでいかなくちゃいけないのに。そういう意味では、この作品はアニメなのかも。
個人的に、生まれ変わりやタイムトラベルやら夢落ちやら、元に戻す、という終い方があまり好きではなくて。個人的趣向の問題。
流れるエンドロールを観ていたら、今のアニメ界の勢力全部つぎ込んで作りました!!!って錚々たる名前があって、監督・脚本として新海監督の名前はあるけれど、自由にやれたわけじゃないんだろうなって少し深読みしたりしなかったり。
新海監督は、次はどんな綺麗な画をみせてくれるんだろう。楽しみ。
- 作者: 新海誠,東宝,コミックス・ウェーブ・フィルム,角川書店
- 出版社/メーカー: KADOKAWA/角川書店
- 発売日: 2016/08/27
- メディア: 単行本
- この商品を含むブログ (25件) を見る