ルドン -秘密の花園
■ ルドン -秘密の花園 三菱一号館美術館 / ¥1,700 (¥1,500)
オディロン・ルドン(1840-1916年)。モネ、ロダン、ゾラと同い年。
1916年没。最期は、WW1の前線に送られた息子さんの無事を祈りながら亡くなった、とあって。
40過ぎて生まれた子どもで、長男は生まれて半年くらいで亡くなって、そのあと生まれた次男坊で、一人息子で、それはもう可愛がっていたに違いないのに。
息子さんは結局どうなったのかは書かれていなくてそっちのほうが気になってしまった。生きて帰れたのだろうか…。
夢想的、幻想的な作品が多く、ぱっと見るとシュルレアリスムをどこか彷彿とさせるような。でも、解説を読むと、自然科学的欲求や神話的・宗教的な要素が含まれていて、実は計算高い絵なのかもしれない。観る人が観たら、わかる!みたいな。
色が入ってからの作品は、青がとても印象的でした。印象派のようなタッチなのに、色がビビッド。ずっと観ていたくなる青。中毒性のある色の置き方をしていて、その色の使い方がとても好きでした。
ドムシー男爵には、食堂装飾を製作する際、青ではなくてもっと暖色を!みたいな注文を受けたらしいのですが。
奥行があったり、モチーフは写実的なのに、背景は印象派のように色がぼやけている作品もあって。そういう組み合わせをする作品をあまり知らなかったので、面白かったです。
36 ドムシー男爵夫人の肖像は、奥さんの描き方は写実的なのに、背景そんな感じでいいんだ!って。
いつも企画展に行くときは好きな絵のポストカードを1枚買うようにしているのですが、今回は買えなかったのです。なんだか本物の絵にパワーがありすぎて、プリントされた絵と同じ作品に見えないというなんとも不思議な感覚に苛まれたのでした。
始まったばかりなので、また本物観に行けたらいいな。
webに館長さんと大宮エリーさんの対談があって、印象的だった大宮さんのお言葉。
たしかに《グラン・ブーケ》って、天国の宮殿の入り口に置いてある花みたいです。今世で一生懸命頑張ってきた人たちを「お帰り~」って迎えてくれるような、そんな花。
(memo 35 若き日の仏陀 39 灰色の小さなパネル 87 野の花のいけられた花瓶
なにかの宗教の女性を描いた作品なのだけど、曖昧なのでタイトルが近年は変わっているっていう解説がされた絵の名前忘れた。なんだっけ。)
もっと知りたいルドン―生涯と作品 (アート・ビギナーズ・コレクション)
- 作者: 山本敦子,高橋明也
- 出版社/メーカー: 東京美術
- 発売日: 2011/10/30
- メディア: 単行本
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フランクホーヴァット写真展
■ フランクホーヴァット写真展 シャネルネクサスホール 無料
ドアマンが開けてくれた世界の向こう側には。
ファッションだけではなく、色々な写真があったのだけれど、一番印象に残ったのは、
群衆の中で険しい顔をしてこちらを見つめている女性のお写真でした。
なんでこんなに物憂げな表情なんだろう、この人だかりはなんなんだろう、と思って題名を読むと、”ギャラリーラファイエット百貨店近くにて、クリスマス前の買い物客たち”
どうやら年末の買い出しに来た人たちのお写真だったらしい。なぜそんなにも険しい表情をして、買い物をしなくちゃいけないのか。しかもハッピークリスマスの時期に。
この時、女性が何か個人的に深刻な問題に直面していたかもしれない。
もしくは、社会的に何か問題があって、クリスマスなんか楽しんでいられない風潮だったのかもしれない。
けれど、そういえば自分も年末は、買い出し大変だなあ、寒いなあ、面倒だなあ、ううう。と思いながら、忙しなく動いていたよなあ、でもなんだかんだ楽しい年末を過ごしたなあ、と思い出して。確かにこういう顔になっちゃうときもあるよなあ、クリスマス前だったとしても。と思ったのです。 大変だよね、年末の買い出し。
どうしてこの写真が、もっと社会的な問題に直面していて、それに対するアンチテーゼを含んだ写真だと、自分は感じたのか。価値観が凝り固まってないかい?って言われたようで、なんだか勝手に一本取られた気がして、おもしろくて笑ってしまったのです。
人間の感情は、現象の大小に関わらず、個人の物差しで測ることしかできない。
写真はただその現象を切り取っているだけで、その撮られる側の感情と、撮る側の意向と、それを観る人の感想は、ちぐはぐで相容れなくて、だから写真って面白いなあと思う。
写真展 オードリー・ヘプバーン
■ 写真展 オードリー・ヘプバーン / 日本橋三越 ¥800
オードリーヘップバーンはかわいい。
私が映画っていう娯楽に興味を持ったのは、中学生だか高校生の時、英語の授業で観たローマの休日がきっかけでした。
それまで、古い映画を観る機会がなかったのです。というか、インターネットが発達していない時は、古い映画なんて知るきっかけも、見られるチャンスもなかったよね…。
TVでやるロードショーでしか洋画に触れたことなかったもん。
古い映画を観るっていう概念がなかった。そう考えると今ってすてきな時代。
カメラマンさんもオードリーのこと撮るの楽しくて仕方なかったんだろうなあ。
バンビのイプがとてもかわいかったです。
グッズ売り場で、カタログだと勘違いして購入した写真集に、展覧会の中で一番お気に入りだった写真がなくて、ちょっとだけ落ち込んだけれど、でも、まあほとんど載っていたしかわいかったから、まあいっか。
アジェのインスピレーション ひきつがれる精神
■ アジェのインスピレーション ひきつがれる精神 / 東京都写真美術館 ¥600
マン・レイときけば、どこにだって行きます。
2018年の美術館初めは、東京都写真美術館。ウジェーヌ・アジェという写真家は知らなかったのですが、マン・レイがシュルレアリストと共通するものを感じとり、シュルレアリスム革命誌に作品を取り上げた。とあって。シュルレアリストと共通するものを感じとるってなんと感覚的な…って気になったので行ってきました。
アジェの作品はとても詩的でした。
記録、素材としての写真のはずなのに、どこか物語性を帯びているように感じてしまう。写真に込められた思いや思想を探そうとしてしまう。静かなパリの街に何かを感じて、アジェはシャッターを切ったのだろうか。
現代にとってはありふれた写真の構図なのに、写真を撮るぞ!街を撮るぞ!こういう街を撮りたい!そういう欲みたいなものは作品からは、全く感じられなかった
作り物じゃない、狙っていない、わざとらしくない。ただそこにある街並みを切り取る。ただそれだけ。
ただそれだけなのに、無機質ではなくて、なぜかもっと深くに何かがあるように感じてしまう。
とても不思議な写真でした。もっともっと観てみたくなる。きっとそういうところに、マン・レイもシュルレアリスムを感じたのかも。よくわからないけれど。
(memo. 近代写真の先駆者/ フォトグラム/ ピクトリアリズム)
Eugène Atget: Paris (Bibliotheca Universalis)
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みかん。
■ 草間彌生 my soul forever / フォーエバー現代美術館 ¥1,200
京都に新しく出来た美術館に行ってきました。 祇園ど真ん中。
美術館といっても、建物は、伝統的な日本家屋(有形文化財の八坂倶楽部という場所らしい)でこじんまりとしていて、美術館というよりギャラリーな感覚。
原美術館のような規模で、一階・二階、そして日本庭園。カフェもあり。
日本家屋なので、靴を脱いで鑑賞。畳に障子。
草間彌生さんの作品と畳の親和性なかなか面白かったです。
草間さんは、ダダっぽいアーティストだと思っていたけれど、日本に戻ってきてからの作品は、結構日本っぽい?作品が多いんだなあと思った。
色味や雰囲気が、雪国の冬、家の中 って感じでした。とても感覚的な印象ですが。
寒いんだけど、暖かいみたいな、おこたに入ってぬくぬくしてるけれど、外は雪景色みたいな?
お写真撮れる作品も数点。美術館の入り口には、あの大きなかぼちゃもあったので、これからも祇園に行った際にふらっと立ち寄りたい。
そういえば、museum とgallery ってどう違うんだろう。アカデミックかそうでないかの違い?
シャンソン。
■ パリ・グラフィック ロートレックとアートになった版画・ポスター展 三菱一号館美術館 / ¥1,700 (¥1,500)
いいなあ、こんなポスターが街中に溢れ、シャンソンで賑い、人間的というより動物的で、でも哲学的で生きづらい、古典から現代への変わり目。この時代は、面白い。うらやましい。この時代を生で感じてみたかったっていつも思う。
ファン・ゴッホ美術館。本館に行ったことがあるのですが、浮世絵が多数展示されていて。印象派と知らず印象派が好きで、知識なく好きな画家の美術館を巡っていた時があったのですが、この美術館に行って、日本とゴッホやら他の印象派の関係を知って、だから好きだったんだなあ、と思ったことを覚えています。日本人。
そのファン・ゴッホ美術館と三菱一号館のコレクションを展示している今回の企画展。シューベルトの音楽が流れていたり、19世紀パリの写真が飾られていたり、当時を追体験できるような展示方法で、とても面白かったです。
ナビ派というワードがたくさん出てきたので、ナビ展行った人は楽しめると思うし、今上野でやっているジャポニズム展と併せて行っても、時代がかぶっているので楽しいと思う。
三菱一号館、やっぱり好きです。たぶん私は、芸術を通じて、その当時の時代背景だったり民族性を知ることが好きなので、多角的に情報を与えてくれる三菱一号館さんの企画展は、本当に面白いのです。
memo ピエール・ボナール 小さな洗濯女(茶色の発色が綺麗。)
パリ・グラフィック: ロートレックとアートになった版画・ポスター展 (単行本)
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いったりきたり。
■ 婚約者の友人 (2016)
もともと戯曲が原作らしく、それは1930年代のものだからいいとして、どうしてフランソワオゾン監督は、この原作を選んだんだろう。
戦争に対して、憎んでいた人も、反省していた人も、何かを失った人も、それを乗り越えた人も、WW2に向かっていく史実を私たちは知っているので、とてもアイロニーな作品だった。この後また、フランスとドイツは戦うけれど、アンナはその時、どちらの国にいるのだろう。
フランソワ・オゾン監督という情報だけを耳に入れて、劇場に向かったので、冒頭、耳が迷子になった。最初は、ドイツが舞台だったのでドイツ語だったのでした。ダンケシェン。
ドイツのシーンはドイツ映画っぽく、無機質・幾何学的で、フランスへと舞台が移ると、フランス映画っぽく情感たっぷりに撮られていて、面白かったです。
この監督さんは、実は結構辛辣に社会を批判しちゃうメッセージ性強めな作品を撮る方だなあ、と思っているけれど、これも違わず。
真実至上主義、嘘潔癖症気味な現代に対するアンチテーゼなみたいな映画だなあ、と。
嘘を重ねても、それがばれないのは、情報伝達網が発達していない時代のおかげで。
もし、これが現代だったら、すぐに嘘だってばれてしまう。
でも、嘘が正しいこともあるよね、きっと。って。
嘘に救われたり、他の場所に逃げて新たな人生を始めたり、そういうことは、たぶん現代ではできない。
今のご時世、世界は繋がりすぎているので、探られたら、すぐばれちゃうもんね。
懺悔のシーンでの牧師さんの台詞と、アンナの自殺に対する思いの台詞が直接的だったことが、とても印象的です。
モノクロとカラーをいったりきたりする演出は面白かったけれど、
特に最後のシーンで、化粧も顔つきもパリジャンになっていたアンナの佇まいがとてもかっこよかった。
原題は Franz。婚約者のお名前ですけれど、ファニーのお兄ちゃんの名前はフランソワだし、もともとフランスの意だし、色々と考えてしまうのは、たぶん監督さんがフランソワ・オゾン監督だからなんですけれど。フランソワ。
容れ物は、とても収まりがよくて、一見するとハッピーエンドのように感じるのだけど、近づいてよく見ると、実は怖くて薄気味悪くてやっぱりホラー映画監督さんだと思う。フランソワオゾン監督って。好きです。
memo/ 音楽: フィリップ・ロンビ/ マネ「自殺」
エルンスト・ルビッチ監督作「私の殺した男」の原作としても知られるモウリス・ロスタンの戯曲を大胆に翻案して