いったりきたり。

婚約者の友人 (2016) 

 

舞台は、第一次世界大戦第二次世界大戦の間。

もともと戯曲が原作らしく、それは1930年代のものだからいいとして、どうしてフランソワオゾン監督は、この原作を選んだんだろう。

戦争に対して、憎んでいた人も、反省していた人も、何かを失った人も、それを乗り越えた人も、WW2に向かっていく史実を私たちは知っているので、とてもアイロニーな作品だった。この後また、フランスとドイツは戦うけれど、アンナはその時、どちらの国にいるのだろう。

 

フランソワ・オゾン監督という情報だけを耳に入れて、劇場に向かったので、冒頭、耳が迷子になった。最初は、ドイツが舞台だったのでドイツ語だったのでした。ダンケシェン。

ドイツのシーンはドイツ映画っぽく、無機質・幾何学的で、フランスへと舞台が移ると、フランス映画っぽく情感たっぷりに撮られていて、面白かったです。

 

この監督さんは、実は結構辛辣に社会を批判しちゃうメッセージ性強めな作品を撮る方だなあ、と思っているけれど、これも違わず。

真実至上主義、嘘潔癖症気味な現代に対するアンチテーゼなみたいな映画だなあ、と。

 

嘘を重ねても、それがばれないのは、情報伝達網が発達していない時代のおかげで。

もし、これが現代だったら、すぐに嘘だってばれてしまう。

でも、嘘が正しいこともあるよね、きっと。って。

嘘に救われたり、他の場所に逃げて新たな人生を始めたり、そういうことは、たぶん現代ではできない。

今のご時世、世界は繋がりすぎているので、探られたら、すぐばれちゃうもんね。

懺悔のシーンでの牧師さんの台詞と、アンナの自殺に対する思いの台詞が直接的だったことが、とても印象的です。

 

モノクロとカラーをいったりきたりする演出は面白かったけれど、

特に最後のシーンで、化粧も顔つきもパリジャンになっていたアンナの佇まいがとてもかっこよかった。

 

原題は Franz。婚約者のお名前ですけれど、ファニーのお兄ちゃんの名前はフランソワだし、もともとフランスの意だし、色々と考えてしまうのは、たぶん監督さんがフランソワ・オゾン監督だからなんですけれど。フランソワ。

 

容れ物は、とても収まりがよくて、一見するとハッピーエンドのように感じるのだけど、近づいてよく見ると、実は怖くて薄気味悪くてやっぱりホラー映画監督さんだと思う。フランソワオゾン監督って。好きです。

 

memo/ 音楽: フィリップ・ロンビ/ マネ「自殺」

 

エルンスト・ルビッチ監督作「私の殺した男」の原作としても知られるモウリス・ロスタンの戯曲を大胆に翻案して