【音楽】CEREMONY(2020)
わたしは音楽に詳しくないので、彼らの鳴らす音がロックなのかどうかはよくわからないのだけれど、社会ではなくて、日本の音楽シーンに対して中指立てちゃってるんだろうなあ、っていうのは少し感じてしまう。
■ CEREMONY(2020) /King Gnu
彼らの音楽は後年どういう切り口で語られるようになるのだろう。
芸術から、歴史や当時の時代を知ることが大好きなので、そういう出会い方をしたかったと、本当は思う。 西洋から借りた様式の模倣段階を経て、どのように脱却するか、みたいな東アジア人が直面する~とか論じようと思えばいくらでも書けちゃう。
でも、このアルバムの 初回限定版についていたライブ映像を見たら、そんなことどうでもよくなってしまった。この音楽すきだなあ、って単純に音を楽しめば、難しいことどうでもいいやって。
もう一個だけ言っていいなら、芸術団体という意味で、とても面白いなあ、とは思います。バンドだけでなく、常田さん界隈のおはなし。
以下だらだらとアルバムの感想。
■ 開会式
開会式~幕間~閉会式は、元々同じ曲だったとインタビューで読んだ。しかもずっと前にあった曲だったって。 人生の目的がすでにあって、まるで逆算して生きているような方だなあ。
■ どろん
映画の主題歌ということで、映画館のような大きな場所で映えそうな曲。
キングヌーの曲は、歌唱パートの音の置き方が、弦楽器、というかオーケストラのバイオリンみたいだなあと思うことが多くて、この曲は特にそう思った。
歌い方も、裏声やら技巧的に使って、弦で弾いているようなそんな音。
■ Teenager Forever
曲はもちろん好きですが、MVが完璧すぎる… 年末の音楽番組でバンド名をお茶の間に認知させて、年始に、メンバーの自己紹介MVでパーソナルを認識させるの強い…。
MVのことになってしまうけれど、ドキュメンタリー風の映像をいぐちさんが走るっていうわかりやすい演出でパッケージして、作品にしてしまうのが面白い。ただのバンドヒストリー映像から、一気にコンセプチュアルになる。このMVのこと語ろうと思ったらたぶん別記事で、いくらでも書けちゃうと思う。
とにかく歌詞、曲調、映像の持つ哲学みたいなものがぶれずに、Teenager Foreverを提示しているので、普遍性を帯びちゃう。結果、鑑賞する側が個人的な経験に各々落とし込んで、この作品と対峙出来るので、とても現代アート臭しちゃうのです。
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このバンドの面白いところは、主旋律多く歌う、というか高音で耳に残りやすいパートを歌うボーカルが曲を作っていないということだと思っている。
曲毎に佇まいや歌い方を変えても、バンドの芯がぶれないし、
歌が主張ではなく表現になるので、一曲に、まるで舞台を観ているような、そんな吸引力がある気がするのです。
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■ ユーモア
まるで呟くように歌うね。 あまり声を重ねていないからか、ほんとうにつぶやいているみたい。
曲を聴いて頭に浮かんできた情景と、歌詞が一致していて、笑ってしまった。まるで映画のサントラのよう。
■ 白日
ずっとリピートできちゃう。賛美歌のようなゴスペルのような。教会のお葬式で流れてそうな曲だなあ、って。
冒頭の高音もインパクトがあるけれど、2番に入るギターから高音に繋がる箇所がとても気持ちよい。それまでのぐちゃぐちゃした思考を、解放してくれるというか、カタルシスを感じる。
つねたさんの書く詞って、キャッチコピーみたいだなあって思う。 物語性はあまりなくて、難解でもなくて、 わかりやすくて誰でも共感できそうな言葉を、色々な角度から提示してくるから、フックされて、歌詞の全部ではなくてもどこかに共感できるフレーズがある。
■ 幕間
ほんとうに全く曲と関係ないけれどルネ・クレールの幕間が頭をちらつく…。 あたらしい技術を見つけてたのしそうに創作している人たちってそれだけで魅力的だなあと思っていて、そういう意味では共通しているなあ、って思うのです。
■ 飛行艇
初めて聞いた時、なんだか懐かしさみたいなものを感じた。
古典の焼き直しというか、そこにメジャーシーンにいるバンドが配信だけどシングルで出すっていう、真正面から挑む姿勢がたまらなくかっこいい。し、単純に曲がかっこいい。
最後転調してテンションが上がるのに、ベースの音階が下がってくるところが、だんだん降下してくる感じがして好きです。盛り上がっているけれど、どこか俯瞰しているなあ、って。
■ 小さな惑星
車のCM。疾走感があって、やっぱりサントラみたい。
キングヌーの曲は、歌詞と音が乖離していなくて、聴いていてとても気持ちが良い。 この音楽のフレーズを、日本語に訳したら、こうなるんだろうなっていう。
ドラムのブレーキ感がたまらない!
■ Overflow
小さな惑星からの流れが気持ちよい。 家入さんに提供した曲のセルフカバー。家入さんverは声が強くて歌の曲という感じだったけれど、こちらはリズムが強め。
すごく綺麗な曲だなあという印象。公式みたいなお手本みたいな枠からはみ出ていない綺麗な曲。
■ 壇上
よくわからないけれど、つねたさんが自分の表現したい世界を構築して、表現して、足りない音は外部から補強して、その中で3人と出会って、色々経て、結果、今このタイミングでこの曲があるんだろうなあって。
ドラム・ベース・声が入ってるタイミングで、テンションが変わるのが好きです。
暗闇からいきなり明るくなり視界が開ける感じがして、耳心地がよい。
初めて聴いた時、主張が強すぎて聴きこめなかったのだけれど、何回か聴いたら、なんだろう、ミュージカルみたいな歌だなあって。トイストーリーとかディズニー映画の劇中歌みたい。そう思ったら、聴けるようになった。
■ 閉会式
壇上の終わりのピアノからのつながりが好き。 鳴る音は冷たいのに、観客が高揚し興奮しているのですごく悲しくなってしまう。
壇上→閉会式の流れは、アレクサンダーマックイーンの映画を思い出してしまった。 あの映画は、表現を消費してしまうことの恐ろしさみたいなものを感じたけれど、そういう感覚。
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sympaよりも、大きな場所で鳴ったらかっこいいんだろうなあ、みたいな曲が増えた印象。 ライブいってみたいなあ、と思ってしまった。
このバンドは面白いなあ。