梅雨が明けた頃に。

■ 水声 / 川上弘美

 

戦争のこと、サリンのこと、震災のこと。一本太い現実と。

愛と死と、そういう個人的なことと、

良い塩梅で絡めて、マクロ過ぎず、ミクロ過ぎず、すっと違和感なく、入ってくる。

 

好きってなんだろうって。生きるってなんだろうって。

社会で起きること。社会で生きること。

 

水声 (文春文庫)

水声 (文春文庫)

 

 

ナビ派。

■ オルセーのナビ派展 三菱一号館美術館 / ¥1,700

 

ナビ派って知らなかったのですけれど、とても面白かった。

比較的お金に余裕のある若者たちが、学生時代に仲良しグループでいろいろなことを実験して、なんかグループにして名前つけたいね…そうだナビってよぼうぜ!って青春を謳歌し。

その後、大人になり、それぞれ自分のスタイルを確立していくのだけれど、

あいつ今こういう感じで頑張ってるのかあ~みたいな感じで

それぞれ尊敬し合いながら、時々会えば昔に戻って思い出話に話を咲かせる。

みたいな関係性。とてもうらやましい。楽しそうだなあ。

思想や芸術方法に共感して結びついた実験団体ではないので、時を経て自分の表現したいことが変わっても、特に仲たがいすることもない。いいなあ、楽しそうだなあ。

 

作品自体もとても好みでした。印象派よりも色使いが濃くて、イラストのようだった。

日本の浮世絵に影響されたと思われるキャンバスの大きさや、美人画のような女性の絵。

 

 

かぼちゃ

草間彌生展 国立新美術館 / ¥1,600

 

ロンドンのテートモダンで観た映像作品がもう一度見たくて、でも日本ではなかなかそういう機会がなくて。

だから、今回この展覧会で観ることができてよかった。

 

 

無限の網―草間彌生自伝 (新潮文庫)

無限の網―草間彌生自伝 (新潮文庫)

 

 

春。

アルチンボルド展 / 国立西洋美術館 ¥1,600

 

16世紀ハプスブルク家お抱えのアートディレクターさん。

 

だまし絵~みたいな特集でよく観る絵だったので知っていたけれど、

こんなに古い絵だとは知らなかった。

 

動物、植物や魚介類などの描写も細かく、だからある程度現代の人が描いた絵だと思っていたのだけれど。ライオンや象など、当時のヨーロッパにいたのかな。

 

もしかしたら、こういう動物などの知識を知っている、というのが貴族たちの一種のステータスだったのかもしれないなあ、と思ったり。

 

当時、博物館のような美術館のようなそういう知識を詰め合わせた場所があったって書いてあったのだけれど、名前を失念してしまった。なんだったっけ。

 

奇想の宮廷画家 アルチンボルドの世界 (TJMOOK)

奇想の宮廷画家 アルチンボルドの世界 (TJMOOK)

 

じっぐらとう。

■ ブリューゲル バベル塔展  / 東京都美術館  ¥1,600

 

ブリューゲル バベルの塔展へ行きました。最終日に駆け込み。

 

ブリューゲルももちろんですが、同時に何枚か展示されていたヒエロニムスボスの絵が大好きなのです。今回はこれがお目当て。

 

どれくらい大好きかというと、ボスの出身地デンボスにあるヒエロニムスボスアートセンターに行くために、わざわざオランダに行ってしまったくらい好きです。

アートセンターといっても、教会で、そこにボスの全作品(すべて贋作)があり、ボスが描いたおもしろい生き物のオブジェが天井から吊るされていたりと、ゆるい感じなのですが。

 

そんな雰囲気の場所だったからか、デンボスで一番印象に残ったことは、そのアートセンターではなく、電車の駅から降りてセンターまで歩いて向かう際、突然どしゃぶりになってしまったので、傘を買うために地元のスーパーにかけこんだことで。すぐ使いたかったのでタグを取ってほしかったのですが、レジにはさみがないということで、ハサミを求めてスーパーの中をうろうろしたのが良い思い出です。精肉エリアで無事発見し、白衣を着てマスクをしたおじさまがちょきんと切ってくれたのでした。

雨でびしょびしょに濡れながらハサミを求めて徘徊している日本人を哀れに思ったに違いない…。親切にしてくれる、デンボスの人、やさしい。

 

話がそれた。

 

ボスの絵は、不気味だけれど魅力的な生物がリアリズムの中にすとんと書かれているところが、好きな理由です。今風に言うと、きもかわいいキャラクターっていうところでしょうか。

絵がとてつもなく上手な人が、わざとわけわかんないもの描くの、いいよね。マグリットとか。

 

もちろん展覧会の目玉作品、ブリューゲルバベルの塔は傑作でした。あんなに細かく描いているなんて、ルーペでじっくり見たかった。実際は、誘導されながら流れるように観終わったので、もう回転すしの寿司になった気分で、観ました。バベルの塔

 

聖書の物語を直接的に描く作品って、啓蒙的意味合いが強いと思っていたのだけれど、ブリューゲルバベルの塔はそうではなく、ブリューゲルお得意の庶民の暮らしがそこにはあって。人間たちが、目の前にあることを真面目に着々とこなし、そこには人の生活がある。そこが描かれいて面白かった。

旧約聖書を読んだ際は、欲深い人間たちがそれが神の逆鱗に触れた。みたいな二元的お話な印象だったのですが。

なんで、神様の怒りに触れ、言葉をバラバラにされなくてはならなかったんだろう、ただこの人たちは、別に神様に背こうと生きていたわけでなく、ただ必死に毎日を生活していただけだったのに、って自分の中で聖書を再発見することができました。

 

灼ける青と、フィルター越しに見えるは、徒然。

蜷川実花 うつくしい日々 / 原美術館 ¥1,100

 

原美術館で10日間限定でやっていたので行ってきました。父・蜷川幸雄の死に向き合った際に撮影した作品の企画展。出不精なので、短期間の展覧会は、いつもだったら行きたくてもいつのまにか終わってしまうパターンなのですが、これはなんだか行きたくて一日中うずうずがどうにも収まらなかったので、なんとか閉館駆け込みで行ってきました。あんなに早歩きしたのはいつぶりだろう。

 

今回の展覧会は、作品に限り撮影OKで、何枚も撮ってしまったのですが、(むしろハッシュタグをつけて、SNSでの拡散を推奨していた。) そうすることで、ずっと広範囲の人の中に蜷川幸雄は生き続けるし、たぶん私もこれからちょっと時間があるときにアルバムをスクロールしたりなんかして、この作品の写真に辿り着く度、蜷川幸雄を思い出すのだろうなあ、と思う。

 

桜の写真が数枚展示されていたのですが、とても淡い色で、なんだか泣きそうになってしまった。私が、今年も綺麗だなあ、なんてのんきにお花見をしながら毎年楽しんでいる桜は、誰かにとっては、そうではないこともあって。みんな平等に同じ風景があるのに、観る人の感情によってこんなにも違った光景に見えるものか、と。

 

あまり生のお芝居は見ないのですが、"世界のニナガワ"の作品を一度だけ観たことがあります。その舞台が終わり拍手鳴りやまない中、役者さんに手招きされて舞台上に出てきた蜷川幸雄さんが、なぜか、舞台の内容より強く印象に残ったのです。

そのときの蜷川さんは、恥ずかしそうに、でも嬉しそうにはにかんでいて。真っ黒のスウェットのようなものを着ていて。(役者さんが舞台上に呼んでいるとき、いやおれはいいよ、ほんとにいいって、みたいなジェスチャーをしていた。2階か3階の端席だったので、舞台袖がよく見えたのです。) TVで観る怒ったり怒鳴ったりしているイメージが強かったからかもしれません。

今回この展覧会の開催を知って、よくわからないけれど、このときの光景をがつんと思い出したのです。

 

知っているけれど、知らない人の死はなんだか、少し不思議で。死に近づいていく光景を見ぬまま、死の姿を見ぬまま、少し遠いところから死を知ることがほとんどで、心情の置き所が定まらない。あの時、はにかんでいた元気な蜷川幸雄の姿は、私の中に強烈に残っているのに、もうここにはいなくて、更新されることがない。うまく説明できないけれど、この写真を観て、死に近づく時間まで、私の中の感情を更新したかったのだと思う。だから、どうしても行きたくて仕方なかったのかもしれない。

 

写真とともに、蜷川実花の言葉もいくつか添えられていたのですが、一番印象に残った言葉を。

父はなんの後悔もない人生を送ったと言ったし、どこを切り取っても幸せな人生だった。 私も父と過ごした日々になんの思い残すこともなかった。 

 

 

うつくしい日々

うつくしい日々

 

 

変わらないために、変えるあれこれ。

ここ一か月で、恐怖分子やらコナンやら、観る映画のアップダウンが激しい。

 

名探偵コナン から紅の恋歌 (2017 日本) / TOHOシネマズ

 

コナンの映画を劇場で観たのは、何年ぶりだろうか・・・ 

理由はいくつかあるのですが

 

一つ目。

もしや大人が観てもいいんじゃないか、コナンって。って気が付いたから。

 

コナン好きです。子どの頃は、アニメも映画も観ていました。大人になっても、やっぱり黒幕は気になるので、黒ずくめの回は見ているし、映画も、テレビでやっていたら見るし。

でも、大人だし、さすがに恥ずかしいし、劇場でわざわざ…と思っていたのですが、どうやらコナン映画の客層って20代女性も結構多いらしいとどこかで見かけて。

私みたいに子どものころ見ていた層が大人になっても、見続けているのでは…。

 

二つ目。

ここ数年で、アニメーション映画を映画館で観ることに抵抗がなくなってきたこと。

 

特に昨年は、君の名は、からはじまり、この世界の片隅に、最近だと夜は短し歩けよ乙女などなど、映画館でアニメを楽しむことが増えてきたのです。

 

三つ目。

はっとり!かずは!!!京都!!!倉木麻衣!!!!

 

一番好きなコナン映画は、迷宮の十字路です。まるたけえびす~からの、ようとうむらまさやな!のながれ!!!!!まるたけえびす~からの、やっと会えたっちゅうわけか・・・のながれ!!!! とても個人的な理由。

 

からの四つ目。

金曜ロードショー地上波初放送・純黒の悪夢でのEDとED後パート全カット事件。

 

久々に京都が舞台の映画ということで、ちょっと気になっていたところで、あの全カットを目の当たりにし。

迷宮で一番好きなシーンは、あの倉木麻衣の京都EDとED後のシーンなのに!もしや来年のTV放送も、削られてしまう可能性が…!

ならいっそ観てしまおう!

 

と、いうわけで、ひさびさに劇場で映画を観る運びとなったのですが

観終わった直後の感想は、つ、つかれた・・・です。

嫌な疲れではなく、すっきりとしたものだったのですが。

 

非常に情報量が多い映画でした。常にキャラクターの台詞が詰まっていて、余白が少ない。特に、序盤は、事件とかるたの試合、推理と恋愛、ふたつのストーリーが別々に進み、シーンがころころ変わるので、ついていくのに必死でした。 

また、説明がなく、映像のみで与えられる情報も多く、隙間が少なかったと思います。

けれど、全体の流れは破たんしておらず、すっきりとまとまっていて、終わったあと、ほえーすごい。と単純に映画として関心してしまった。

 

また、今年の映画は、ストーリーの軸がきちんとしっかりしていて、それに合わせキャラクターを適材適所に動かし、流れを遮断しない意味のある(?)爆発と、でも、毎年お決まりのシーンはきちんと入れて、と非常にコナン映画としてもバランスがよかったと思います。

 

(最近のコナン映画での爆発やらアクションシーンと、事件との関連性の希薄さはちょっと気になるポイントだったのです…。)

 

そして久々に映画館で鑑賞して気が付いたことは、

 

爆発シーンがかっこいい!!!ということです。大画面大音量の大爆発シーンは、盛り上がります!なんであんなにも爆発シーンやアクションシーンが多いのかわかりました。見応えあります。

 

あと、来年の製作予告がすごい。私が劇場で観ていた時は、最後に xxxx年 第xx弾 製作決定!と劇場画面に出るだけだったと思うのですが、最近は違うんですね…予告にもお金かけてます。かっこいい。きちんと映像もあり、声もあり演出もあり…!

あの最後数分の予告を観るために、来年も映画館に行きたい…と思ってしまった。 

 

というわけで、予想以上にとても楽しめました。満足。

来年も観ちゃうのかも。観ちゃいそう…。楽しみです。

 

 

渡月橋 〜君 想ふ〜 (名探偵コナン盤)

渡月橋 〜君 想ふ〜 (名探偵コナン盤)